ひとなつのアヴァンギャルド~花火大会編~
こんにちは。花火は人混みに揉まれて見るより、静かに聴くほうが好きなおぐりんです。
皆さんご存知のとおり私は理系なので花火が打ち上がるとストロンチウムとか言いたくなります。
理系男子が1億年に1回の花火大会デートで
「綺麗な花火だね。だけど君のほうが綺麗だよ。」
「手、繋いでも良い?」
という模範解答の代わりに
「あの緑は銅を使ってるね。うん、10円玉のやつ。」
「花火の色は炎色反応を利用してコントロールしてるんだよ」
など、知識自慢の雰囲気ぶち壊し発言をして、1億年後に期待、という感じになってしまう。この話は、今では有名な理系ジョークですね。
そう!Twitterでも2chでも、そこらじゅうでこのネタは使い古されてきました。
新規性がない!
いまどき、女性もこのジョークを知っていますから、逆にいい雰囲気作りに使われちゃったりします。
彼女「花火きれいだね~」
理男「うん。でもきみn」
彼女「ねぇねぇ。理系なんだからナトリウムとかカリウムとかのなんとか反応の話したくなっちゃうんでしょ~。やってみてよー。」
理男「えーw もう、いじわるだなー (デヘヘ」
ヒューーーー 🎇ドカーーン🎆
はい、今理系男子を含むリア充カップルが打ち上がって爆発しました。あーきれいー。
「いじわるだなー(デヘヘ」じゃねんじゃ!
さっさと帰って素数でも数えてろ!
あまりにジョークが有名になってしまったせいで、理系男子諸君はもう炎色反応でネタツイートはできないのです。どうせ5ふぁぼも稼げないでしょう。
というわけで今回は、我々理系男子のために、花火大会で情緒を乱す代わりに100ふぁぼ稼げるネタ返答を考えていきたいと思います。
とりあえず、今回引退を余儀なくされた炎色反応選手から紹介です
①
元素の分類には、元素周期表における縦向きの列、つまり族によって分類する方法があります。このとき1族,2族のアルカリ金属、アルカリ土類金属のイオンを火に晒すと上の画像のように色がつきます。イオンでなければならないので、花火の中ではこれらの金属を含んだ塩(えん)の状態で入れられています。
それでは、これを火に晒すと、なぜ色を呈するのでしょうか?(なにか色がつくことを「色が呈する」「呈色する」というと理系っぽくてキモいです)
②
アルカリ(土類)金属のイオンは、原子核の周りにいくつか電子が飛び回っています。太陽の周りを回る惑星のように、ある軌道に乗ってくるくる回っているのです。すこし難しい話になるのですが、この軌道の半径はある飛び飛びの値しか取れません。(これを「量子化されてる」といいます。このフレーズも理系っぽくてキモいです。)
物理をかじったことがある人なら聞き覚えが有るかもしれませんが、電子にも位置エネルギーというものがあります。軌道の半径が大きい電子ほど高いエネルギーを持ちます。
つまり、イオンが高温に熱せられると、熱エネルギーを得ることで、イオン全体は高エネルギーの状態になります。それに伴って、電子も位置エネルギーが高い状態、すなわち半径が長い状態になろうとします。ここで半径が飛び飛びの値しか取れないことがきいてきます。半径が飛び飛びの値しか取れないせいで、電子はまるで飛びうつるように他の軌道に移動するのです。
さて、飛び出た勢いで、半径が眺めの軌道に飛び移れた電子ですが、本当はもうちょっと小さい半径の方がいいです。飛び移った先では不安定なので、また元の軌道に戻ろうとします。すると、下がった分の位置エネルギーが解放されて、電磁波が放たれます。
電磁波には赤外線や紫外線など、眼に見えないものも有りますが、波長がある範囲に収まっていれば、人間の目に見える色になります。波長は解放された位置エネルギーの大きさによるのですが、アルカリ(土類)金属イオンはたまたま人間の目に見える波長の電磁波を出すのです。(つまり「可視光」です。この言い回しもキモいです)
こうして、花火は綺麗な色に輝くわけです。🎇🎆
はい。というわけで新ネタNo.1は「炎色反応の原理を詳しく話す」です。たぶん、上の数段落をしっかり読んだ人はいないでしょう。それでいいのです。理系は誰にも必要とされていない話題を長々とノンストップで語るのです。
上では少しわかりやすい言葉で説明しましたが、一緒に紹介しているキモい言葉遣いを使えば、ネタ度合いは上がってGoodです。
それではエントリーNo.2「ジャイロ効果」の紹介です。
③
はい。自転車とかコマとかで、時々話題に上がるジャイロ効果です。簡単に説明すると、物体がある回転軸を中心に自転していると、外から力をかけても、その軸がずれないように押し戻す力がかかる効果のことです。
自転車が倒れにくいのも、自転車のタイヤにジャイロ効果が働いているからです。
このジャイロ効果、花火とは関係ないんじゃないかと思う方も入るかもしれません。
それでは以下の写真を御覧ください。
花火のヒューーーーの所の光の軌道を見てください。とくに右側の花火だとわかりやすいです。なんだか波打っていますね。これ、実は花火の玉が垂直方向の回転軸を中心に自転しながら打ち上げられているために、そうみえるのです。
わざわざ回転をかけて打ち上げている理由ですが、まっすぐ打ち上げるため、というよりは上下を保ったまま打ち上げるためというのが主です。最近では、中に込める火薬の種類や配置を工夫することで、ハートや顔の形をした花火を作る事ができます。これらを打ち上げた時に、上下が保たれていないと、変な形にみえてしまいます。これを防ぐためにジャイロ効果を利用してるのです。
ジャイロ効果は直感に反してすごく強い力を生むので、実験などを眺めていても魔法みたいで面白いです。
④
Wheel momentum Walter Lewin.wmv
↑この動画は私のお気に入りの実験動画です。
さて、花火が螺旋状の残像を残すのは、自転のせいですが、もう一つの要因があります。エントリーNo.3「歳差運動」です。
⑤
歳差運動というのは、3次元空間上で回転している物体が有るとき、自転の軸がまた別の軸を中心に回転するという運動です。ようするにコマのような、回りながら軸も回ってるやつです。これのおかげで、花火の玉の導火線部分は、花火の玉の半径より長い回転半径を持ちます。よって、螺旋状の残像がよく見えるようになります。
しかしながら、この効果はすごく小さいです。無視してもいい揺れと言っても過言ではないでしょう。いらないにもかかわらずこういった無駄な説明をしちゃうのは、雰囲気を壊すのにもってこいですね。
さあこんどは距離に関するお話。
エントリーNo.4「音速と高速の差」
⑥音の速さ
あ~~綺麗~ (6秒後) バアン🎆
音が伝わるまでの時間を測ることで、距離を求めるのは雷とかでも有名ですね。
夏の音速はだいたい350m/秒です。もし6秒の差があったら、花火から2kmくらい離れていることになります。
とにもかくにも、音と光に時差があったら、あなたは花火から離れているところにいるのです。もしかしたら穴場スポットかもしれません。穴場で静かに二人で花火見てる時に音速の話をしたら、正直引きます。そんな話はしないようにしましょう。
さて、続いてはちょっと理系っぽい話からはなれましょう。
エントリーNo.5「玉屋と鍵屋」
⑦
たまや~、かぎや~。そもそもこの掛け声がすでにちょっと古い。
そもそも、最近の若いもんは、たまや~とか言うの?ちゃんと意味わかって叫んでんの?あれはね、平たく言えば、大手花火会社の屋号だそうですよ。歌舞伎で言うところの「なりたや~」みたいなやつ。
はい、じゃあいま「たまや~」って叫んでるそこのあなた。玉屋はとっくの昔に無くなってますよ!しかも、花火の管理ミスか何かで大火事を起こして街から追放。トリビアで言ってた。(こうやって、ちょびっとしたはなしでもしっかり文献を差し込んでくるのも理系っぽいです)あんた、叫ぶにしても正しい屋号叫ばないと。市川海老蔵に「なかむらや~」って叫んだら殺されるよ。しっかりしてーなー。
という感じで謎の説教を初めてしまう。理系男子はなんか妙に説教が好きなんですよね。間違いを指摘することで知識自慢をする。ほんまあかんわ。
つまらない話をするならまだしも、説教ですからね。場の雰囲気どころか二人の仲さえ冷えきってしまいますよ。
さて次は、すこ~し哲学的なおはなし。
エントリーNo.6 「クオリア」
あなたが見ているあの赤と、私が見ているあの赤は、違うものかもしれない。だけどみんなあれを赤だと教わってきたから、「あれは赤だ」と主張する。そういうお話。
「きれいだ」って言ってるんだから「きれいだねー」でいいのに、なぜかそこで懐疑的になってしまうやーつ。これだからガチ文系は...
ちょっとまった。クオリアは哲学的な議題なので、文系のものと思うかもしれない。でもね、その短絡的な発想がすでにあなたの貧困な教養を物語ってるの!。そもそも哲学と科学は機嫌が一緒なの。哲学を理系に入れちゃったのは、哲学の歴史を人間の弁償の歴史という側面でのみ強く捉えがちな文系の「お偉方」の発想なんだよね。そもそもそれがよくないよ。ていうか・・・
文系disです。なんで仲良くなるために花火大会に来てるのに、敵を作るようなはなししてるの?世の中、文系のほうが多いんだよ?あなただって、大学院に進まず就活すれば文系扱いだよ?もっと柔和になって。
次はもうちょっと馴染みのあるやつです。
エントリーNo.7 「重力加速度」
⑨
花火大会にて聞こえてきた会話 理系「花火見てて気になることがあってさー、花火って最高点で爆発しないと加速度があるから楕円形になっちゃうじゃん? でも花火は円に見えるじゃん? どうやって最高点で爆発するようになってるんだろ」文系「………。職人技だろ、黙って見てろ」 理系「」
— 星になるまで木材修理 (@ZZRchaliring) 2014年7月20日
とりあえず引用ツイートに登場している理系の方にはご冥福をお祈りします。
なるほど、たしかに花火が球の形に爆発するのはすごいですね。球は対称性が高い形状ですが、現実世界は地面向きの方向にだけ働く力(重力)がありますから、ものを球状に散らすのは至難の業です。
と思うやん?
はいこれ嘘ー これうそー ダウトー。It's a lie!
爆発の直後、火薬にかかっている外力を考えてみてください。これは重力だけです。どの火薬も仲良く垂直下向き(鉛直方向って言うとなおキモいです)に重力加速度を受けます。爆発の瞬間は力積が掛かっているので向きを変えて放射状に運動を始めますが、その後は別に重力以外の加速度を受けてるわけではありません。ですから、爆発せずに上がって落ちてくるだけの花火の玉の存在を仮定して、そこにくっついた座標系で見ると、花火は綺麗な球状に散ります。
しかしここで間違ってはいけないことが有ります。この理系さんは、知識を自慢したいがために、嘘を付いてしまったわけではありません。本当に間違ったのです。でもこの間違いこそが、科学の発展には不可欠なのです。後から見れば、彼は間違いを言っていたことになりますが、何気ない現象に疑問をいだき仮定を立てるというのは理系として素晴らしい姿勢です!
まぁ花火大会の場ではTPOを考えろといわざるを得ないんですがね。
さぁ最後はちょっとエロティックなワードです。接吻にかかわるお話です。やっぱり花火大会のクライマックスでは熱いチッスまで持ち込みたいですからね!
愛する恋人の、色白く凛々しい顔を、そっと見つめる。その艶美な頬を、さらっとナデリコして、背中に手を回し、そっと抱き寄せ、柔らかなチッスをお見舞いする。そこで綺麗な花火が一発開花。
うひょ~意外にもこの記事のテーマに反して、いい雰囲気を作ってくれるかもしれないですよ!
エントリーNo.8 「Kissing Number」
⑩Kissing Number -- from Wolfram MathWorld
「KissingNumber」日本語では接吻数。
これはN次元空間上で、互いに重なり合わないように単位球を並べるとき、一つの玉に最大で何個の球をふれさせることができるか、という数です。
1次元では2個、2次元では6個、3次元では12個であることがしられています。3次元の12個をふれさせる配置は、上の画像のとおりです。これは最密充填構造と同じ配置ですね。
花火の玉の中でも球状の火薬がこの配置で並んでいるのです。ここで球の密度ではなく接吻数を気にするのは、できるだけ少ない火薬で多くの火薬を吹き飛ばす必要があるからですね。できるだけコンパクトに花火を作ろうとする、花火師の省エネ精神が伺えます。
一般の次元の接吻数はいまだ未解決で、今わかってるのは1,2,3,4,8,24次元の場合だけです。ああなんと奥が深い世界なのでしょう。ロマンを感じますね!
情緒もクソもありゃしねえ。
ザ・純粋数学ですよ。ていうかなんで次元を一般化したのか。4次元以上の話なんて研究室の外でしちゃいけません。こんな話をしてるようじゃ、お前の接吻数は永久にゼロだ!
さてここまでで8つのエントリーが有りました。どれも雰囲気に対する破壊力が強いですね。いままでの記事で最も情報収集に時間がかかりましたが、いままで最も書いてて楽しかったです。
このブログを読んでる理系諸君がは非参考にしてください。もし今年、一億年に一回の花火デートがあったなら、このブログで予習したことを実践して、ネタツイートからの100ふぁぼのチャンスです。みんながんばってね!